2010年10月6日、ヴィーン国立歌劇場にて。
Lucrezia Borgia: Oper in einem Prolog und zwei Akten Musik: Gaetano Donizetti Libretto: Felice Romani nach dem Drama Lucrèce Borgia von Victor Hugo * Friedrich Haider | Dirigent * Michele Pertusi | Don Alfonso I. * Edita Gruberova | Lucrezia Borgia * José Bros | Gennaro * Laura Polverelli | Maffio Orsini * Gergely Németi | Jeppo Liverotto * Adam Plachetka | Don Apostolo Gazella * Dan Paul Dumitrescu | Ascanio Petrucci * Benedikt Kobel | Oloferno Vitellozzo * Hans Peter Kammerer | Gubetta * Peter Jelosits | Rustighello * Marcus Pelz | Astolfo グルベローヴァは最初の方は高音がややかすれ気味で、この春ブリュッセルで聴いた時の好調さは感じられなかったけれど、ドラマの進行と共に調子が出てきて高音もきれいに出るようになりました。第2幕最後で死ぬ間際のアリアでは大きな声量で絶叫するような高音は大迫力でもう参りました。聴衆も大喜びの大歓声でした。 ゲンナロ役のホセ・ブロスは相変わらずの美声で上手い歌唱、言うことなしです。私が聴く限りこの人はいつも好調で、安定した実力の持ち主です。 ズボン役のオルシーニを歌ったラウラ・ポルヴェレッリは初めて聴く人ですがなかなか上手く、美しい声は大変魅力的です。ズボン役としては身長があまりないのが残念でしょう。 ドン・アルフォンソ役のミケレ・ペルトゥージも初めて聴く人でまあまあの歌唱ですが、バス・バリトンとしてもう少し低音の迫力がほしいところです。 他の歌手も大方すばらしい声でしたし、合唱も非常に上手かった。 今日はコンサート形式でオケが舞台上にいるせいか、音がことのほか魅力的でこのオケの実力を堪能しました。指揮のハイダーは、奥さんのグルベローヴァのおかげで指揮させてもらえるなど言われることもありますが、これだけの音楽を作ってすばらしい音を弾きだしているということはそれ相応の実力の持ち主だと思いました。音楽的には大変楽しめました。 ところで、このオペラは初めて聴くものなので事前にDVDで予習しました。聴いたものは1980年録画のROHのもので、奇しくもこの日曜日に亡くなったジョーン・サザーランドがタイトルロールを歌っているものです。このDVDの出来はすばらしく、サザーランドは言うに及ばず、テノールのアルフレッド・クラウス、メゾソプラノのアン・ハウエルズ、バスのスタッフォード・ディーンも美しくも迫力ある歌唱で、演技も堂にいったもの、舞台は古典的なつくりと衣装が美しいし、ボニングの指揮もこれぞドニゼッティといわんばかりの心に迫る演奏、30年前の録音にしては音質もすばらしく、お勧めのDVDです。このドン・アルフォンソの迫力ある歌唱を聴いてしまったら他の歌手で満足するのは稀だろうと思います。 コンサート終了後の写真 主要役4人 José Bros and Edita Gruberova Edita Gruberova, 後ろはコンサートマスターのRainer Küchlさん José Bros Edita Gruberova and Michele Pertusi Laura Polverelli Friedrich Haider おまけ。Kさんこと第1ヴァイオリン奏者のWilfried Kazuki Hedenborgさん
by dognorah
| 2010-10-12 20:35
| オペラ
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Comments(5)
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Primrose
at 2010-10-14 08:21
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10日に聴いてきました!グルベローヴァの歌唱に大感激。そしてブロスの安定した声にも聴き惚れましたし、素晴らしい公演で大変楽しめました。グルベローヴァのドレスはdognorahさんが行かれた6日と10日も同じでしたね。コンサート形式だった分、オケの音色や歌唱に集中できましたし、終了後はスタンディングオベーションで大盛り上がり。忘れられない公演の1つとなりました。
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dognorah at 2010-10-15 01:38
Primroseさんも楽しまれたようですね。私はグルベローヴァはもう何回も聞いているので驚きはありませんが、やはり凄いことには変わりありませんね。
今回はオケのすばらしい音が特に印象的でした。
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助六
at 2010-10-30 07:35
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89年にパリで「ボルジア」の演奏会形式上演が行われたことがあって、リセオのプロダクション、サザーランド、クラウス、デュピュイ、アライモ、指揮はボニングという当時のオールスター・キャストでした。
私にとってはサザーランドとクラウスのベルカント・オペラ全曲を聴いた唯一の機会になってしまいましたが、キャリア末期のサザーランドは、音符は最終的にはすべて正確に決めるものの、硬直したような旋律的造形、太いんだか細いんだか分からないような不思議な発声、有名だったはっきりしない言葉の発音など、その2年前に聴いた彼女のリサイタル含め私には不思議な歌唱に聞こえ、彼女のベルカンティストとしての真価はついに分からずじまいでした。
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助六
at 2010-10-30 07:36
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クラウスもこの時は、所々で素晴らしく伸びる声でエレガントな歌唱を聞かせてはくれたものの、全体としては「息も絶え絶え」というのが正直なとこでした。その後94年のウェルテェルでは声楽的にも見違えるような絶好調で至高の思い出を残してくれたんですが。
80年のこの2人なら素晴らしかったでしょうね。 ボニングの指揮は様式的に的確、オペラティックな感覚も欠けておらず、レコードでは分からなかった彼のベルカントの専門家としての才能を十二分に納得させてくれました。後は当時全盛期だったデュピュイが素晴らしかった。 思い返してみると、当時のサザーランドと今のブルベローヴァはほぼ同年齢ですね。共に異例のキャリアですが、07年に聴いたグルベローヴァのノルマ歌唱には私にはこの時のサザーランドを思い起こさせられる部分がありました。
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dognorah at 2010-11-01 08:36
さすがに助六さん、サザーランドのルクレチア・ボルジアを聴いておられるんですね。彼女のキャリアがそれほど長かったとは知りませんでした。しかしグルベローヴァの調子は衰えるどころか以前より向上している部分もあるのが驚異的です。来年はアンナ・ボレナを聴く予定なので、どうなっているか楽しみです。
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