イギリスにあるシャガールのステンドグラス(その1)

いつも立派なブログを書いていらっしゃるフンメルさんに「イギリスにもシャガールの作ったステンドグラスを嵌めた教会があります」と教えられて、早速見に行った。

私の調べた限りでは、そのような教会は2箇所あり、比較的ロンドンから近い。ひとつは、ケント州のTudeleyという村にあるAll Saints Churchであり、もうひとつはWest Sussex州のPortsmouthに近いChichesterという町の大聖堂である。これ以外にもあるという情報をお持ちの方はぜひご教示いただきたい。

今日はTudeleyに行った。ロンドンの環状高速道路M25のJunction5で降りてA21という国道を南下すればすぐである。私のロンドンの自宅から約1時間半で着いた。畑の真ん中にぽつんとある感じの小さな教会である。そばの畑では菜の花が7分咲きぐらいであった。
c0057725_7322948.jpg

c0057725_7325874.jpg

教会の内陣には12ヶ所の窓があり、すべてにシャガールのステンドグラスが嵌められている。それらは想像以上にすばらしかった。フンメルさんも言及しておられる深みのある青がタップリあるし、完全にシャガールの世界に埋没できるのだ。シャガールの油絵を何枚か展覧会場で見るよりもはるかに強烈な印象を与えてくれる。雰囲気がそうさせるのであろう。窓が全て低い位置にあって手で触れる(事実触っている人がいた)近さで見れるのもそれを助けている。

近くに住む愛好者なのであろう、ふらっと入ってきて片隅に座ってじっと絵を見ている人がいた。私も出来れば思いついたときに来て瞑想にふけることができればなぁと思った。

このステンドグラスがシャガールによってデザインされたきっかけは、この教会の近くの町に住む貴族の娘が1963年に近くの海で溺れ死んだことである。亡くなる2年前に彼女はパリのルーブル美術館で開催されていたシャガール展を見に行き、エルサレムのシナゴグのためにデザインしたステンドグラス(原画なのかガラスに仕上げたものなのか不明)にいたく感動した。それを知っていた家族は、死んだ彼女のメモリアルとしてシャガールにステンドグラス制作を依頼する。ちょうどこの教会の大幅な化粧直しのタイミングと合い、そのステンドグラスに合わせて祭壇の後ろに大きな窓を作った。そうして出来たのが写真のものである。下半分の青は彼女が死んだ海を表し、その魂が天上の神のもとへ上っていく様を描いている。
c0057725_7344245.jpg

1967年にこれが完成したときにシャガール自身が見に来たが、出来栄えに大いに満足し、残りの窓も全部デザインしましょう、と提案した。めったに無い申し出に遺族も更にお金を出すことに合意した。残り11枚のうち7枚は1974年に完成する。最後の4枚は1976年完成だが、教会内部の問題のために実際に嵌めこまれたのは9年後で、シャガールが亡くなった直後である。

この12枚の窓は3つのグループに分けられている。内陣の北側の5つの窓は、創造というモティーフで統一されており、アダムとイヴの絵から始まる。

東側の5枚が最初に述べた祭壇画を中心に亡くなった人を念頭にして、「死と復活」というモティーフ、南側の2枚が「喜びと希望」というモティーフで制作されている。この最後の2枚は寒色系は一切使われず、黄色を中心とした暖色系になっている。
c0057725_7354693.jpg

ここは本当にすばらしい世界だ。今まであまりシャガールが好きでなかった妻も感動で言葉を失った様子。この日の夕食時はその反動か、滔々と二人でシャガールの話で盛り上がった。ここは少々遠くても一見の価値は十分にある。欧州在住のかたがたにはぜひお勧めしたい。今日は曇り空であったが、次は快晴の日を狙って午前中に再訪したいと思っている。光によって印象は大きく違う予感がする配置である。

このようなすばらしい体験をするきっかけを与えてくださったフンメルさんには本当に感謝する次第です。

時間的にはChichesterも訪問できたのだが、今日は十分ということでそれはまたの楽しみに取っておき、代わりに近くの温泉地Royal Tunbridge Wellsの街中を散策した。そこでステンドグラスに似た模様のガラス細工のいいデザインのものを発見したのだがそれはまた別に報告したい。
[PR]
by dognorah | 2005-04-13 07:39 | 美術
<< Royal Tunbridge... ロンドンで見つけたおいしいチョ... >>