マクヴィカーの新演出「アイーダ」初日

2010年4月27日、ROHにて。

Aida: Opera in four acts
Music: Giuseppe Verdi
Libretto: Antonio Ghislanzoni after a scenario by Auguste Mariette

Director: David McVicar
Conductor: Nicola Luisotti

Aida: Micaela Carosi
Radames: Marcelo Álvarez
Amneris: Marianne Cornetti
Amonasro: Marco Vratogna
Ramfis: Giacomo Prestia
King of Egypt: Robert Lloyd
Priestess: Elisabeth Meister
Messenger: Ji-Min Park

演出に感銘しました。舞台装置や衣装にはエジプトらしさの無い部分が多分にありますが、そういうことを超越した緊張感溢れる演劇空間には最初から最後まで惹きつけられました。合唱隊や俳優の演じる群集処理が秀逸で、歌が無くて音楽が鳴っているだけの時間でも統率の取れた動きで常に舞台に締りを与えて観客の目をそらさない卓越した演出でした。さすがマクヴィカー!彼の演出は数多く見ていますが今まで見た中では最高の出来です。このオペラは歌が無くて伴奏音楽だけが鳴る場面がいくつかあるのですがそこでのダンスや儀式などがとてもユニークで大いに楽しめました。ラダメスを戦場に送り出す場面では10人ぐらいの半裸の女性がダンスをしながらふんどしひとつのやはり10人ぐらいの男性をナイフで刺して出てくる血を自分の胸などの塗りつけた後その血をラダメスにも塗って必勝を祈祷するようにしています。ダンスの振り付けも大したものでダンサーも質の高い踊りを披露してくれました。ただ、衣装やエジプト人の顔のメークにはやや違和感があるし、刀剣がつばの無い日本刀のようで握り方も日本刀そっくりだし軍人の防具も日本の戦国時代に使われたものそっくりでエキゾティシズムの方向がちょっと違うんじゃないのと言いたいところもあります。カーテンコールでの観客の反応はブーもあればブラヴォーもありで分かれましたが、私は断然ブラヴォーです。

そして、指揮のルイゾッティがまた凄くて、その演出にぴたっと合わせたかのような緩み無い音楽作りで劇的効果抜群、唸りました。今回初めて体験したことですが演出とオケがこれだけの高みに達していると歌手の出来に少々瑕があろうとあまり気にならなくなります。凱旋場面での(この演出ではラダメスの凱旋は無いですが)トランペットは左右のバルコニーボックス席に陣取って演奏されましたが、効果もさることながら最高の演奏でした。

第1幕では主役級歌手3人は決して好調ではなく、それぞれに問題を抱えていましたが時間の経過と共によくなりました。女性陣は回復が早くて後半は持ち味を出していたのですが、ラダメスは改善して時折アルバレスらしい輝きのある高音を出してはいたものの最後まで好調な声にはならなかったのが残念です。第1幕の清きアイーダなど拍手する気にも成らなかった。今まで聴いたアルバレスの中では最低の出来でしたね。
アイーダを歌ったミカエラ・カローシは全面的には好きな声ではありませんが結構いい歌唱で、恋人への愛と祖国への愛の板ばさみになった複雑な心境がにじみ出るようなニュアンスが豊かに表現されていました。
アムネリスを歌ったマリアンネ・コルネッティは昨年9月の「ドン・カルロ」でエボリ公女を好演した人ですが、今回も第1幕こそちょっともたもたしたもののどんどん調子を上げて第3幕では絶好調でした。よかったです。
エジプト王を歌ったロバート・ロイドはいつもの芯のある歌唱が役にぴったり、アモナスロを歌ったマルコ・ヴラトーニャはあまり通る声ではないものの上手い歌唱で満足。ラムフィス役は当初クヮングチュル・ヨーンが予定されていたのになぜかキャンセルされてジャコモ・プレスティアが歌いましたが、この人は声量が無いのかマイクのヴォリュームを一杯にあげて歌っていました。見苦しいものです。今回は久しぶりにアンフィシアター最前列に座りましたが、この席は相変わらず歌手のマイク増幅された声が気になるものの、舞台に強く惹きつけられてそれもあまり腹が立たず。
合唱は男女とも感心する出来で大変よかった。

今日はチャールズ皇太子夫妻もロイヤルボックスで鑑賞されていましたが、いい演目をご覧になったと思います。

カーテンコールの写真は例によってクリックで拡大します。
Marianne Cornetti、Marcelo Álvarez and Micaela Carosi
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Marco Vratogna, Robert Lloyd and Ji-Min Park
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Nicola Luisotti
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David McVicar
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いつもはTシャツにジーンズというマクヴィカーも今日は終演後のディナーに出席するためかブラックタイです。このディナーに出席する人が大勢いて大変着飾った人たちで一杯でした。ROHのFund Raisingを兼ねているので1000ポンド単位の代金で私にはまったく縁がありません。
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by dognorah | 2010-04-29 10:21 | オペラ
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