2010年2月15日、ROHにて。
The Gambler: Opera in four acts Music: Sergey Prokofiev Libretto: Sergey Prokofiev after Dostoevsky’s novella ‘The Gambler’ English translation: David Pountney Director: Richard Jones Conductor: Antonio Pappano Royal Opera Chorus Orchestra of the Royal Opera House Alexei: Roberto Saccà Paulina: Angela Denoke General: John Tomlinson Blanche: Jurgita Adamonyte Marquis: Kurt Streit Mr Astley: Mark Stone Babulenka: Susan Bickley Prince Nilsky: John Easterlin Potapytch: Dawid Kimberg Baron: Jeremy White Baroness: Emma Bernard 他 (あらすじ) 場所はドイツの架空の温泉町Roulettenburgでの出来事で登場人物の大半はロシア人。寡夫Generalは義理の娘Paulinaの後見人で、家庭教師として貧しいロシア青年Alexeyを雇っている。彼の叔母でPaulinaの祖母にあたるBabulenkaはモスクワに住む大富豪であるが、病床にあり、今日明日にも死ぬかも知れず、その場合は莫大な遺産がPaulinaと彼の手に入る事になっている。その金を見込んでMarquisはGeneralとPaulinaに金を貸しており、遺産が入った段階でPaulinaとの結婚を目論んでいる。一方Generalはやはり金を目当てに近づいた若い高級娼婦Blancheとの再婚を考えている。AlexeyはPaulinaに恋をしているがPaulinaの態度は曖昧。 遺産がいつ手に入るか噂話をGeneralとMarquisをしているところに当のBabulenkaが現れる。病気が治って元気になったのでルーレットをしに来たのだという。みんなが驚く中を彼女は延々とルーレットに負け続け、ついに全財産を擦ってしまう。これがGeneralとMarquisを大パニックに陥れ、MarquisはPaulinaに貸した金を返すようにメモを残してホテルを去ってしまう。一方、BlancheはGeneralに見切りをつけPrince Nilskyの誘いに乗って彼と一緒に去る。PaulinaはAlexeyに助けを求める。Alexeyはわずかに持っていた金を持ってルーレット場に行き、幸運にも勝ち続けて大金をせしめる。それを持ってPaulinaのもとに行き、Marquisに借金を返済して二人で暮らそうと考えるが、二人の感情は折りあわず、彼女は金を彼に投げつけて去る。彼は彼女を失ったにも拘わらず賭博に勝った興奮が冷めやらないまま幕。 ----------------------------------------------------------------- さる2月11日にROHで初めて上演されたオペラですが、残念なことに原語上演ではなく英語に翻訳したリブレットを使用しています。ROHでは年に何度か英語翻訳のオペラが上演されますが、いい加減やめて欲しいものです。私は英語翻訳の場合は原則的に見に行きませんが、このオペラは初めて上演するものなので敢えて行きました。 演出のリチャード・ジョーンズは今まで「ムツェンスク郡のマクベス夫人」と「スペインの時」で経験していますが、いずれも感心する出来でした。今回もとてもよくできた舞台だし、筋の運びも淀みなく、登場人物の動作もよく笑いを取れるように色々工夫されています。ただ、第4幕の最後でのアレクセイとポリーナの精神状態の変化の表現がいまいち不明瞭でちょっと不満が残ります。 プロコフィエフの音楽はいかにも彼らしいもので、洒落ていて躍動感に溢れ、大変楽しめるものです。パッパーノの指揮も良かったと思います。 歌手ですが、全員素晴らしい歌唱で文句なしです。特にデノーケ、トムリンソンは声のコントロールが良くて状況に応じたニュアンスの表現はさすがです。デノーケは音程的にも全く破綻はなく、声に深みもありました。次いでサッカとビックリーも良かった。特にビックリーは適役ですね。矍鑠とした老婦人のいい味が出ていました。シュトライトもまあまあ。出番は少ないもののPrince Nilskyを歌ったジョン・イースターリンも魅力的なテノールでした。 カーテンコールの写真 Roberto Saccà as Alexey Angela Denoke as Paulina and Susan Bickley as Babulenka Kurt Streit as Marquis and John Tomlinson as General
by dognorah
| 2010-02-17 02:58
| オペラ
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Comments(10)
コメント連投記録達成中です。丁度わたし好みのモノばかり、レポされてるので。
プロコフィエフは、好きな作曲家ですが、オペラは、「3つのオレンジの恋」と「炎の天使」しか、ナマで観たことがありません。「賭博師」は、数年前、地元のオペラで上演されたのですが、多分里帰りとぶつかったかなにかで、見逃しました。モネ劇場からリヨン歌劇場に移った大野さんの最初のシーズン演目に、「賭博師」が入っていたので唸ったものですが、やはり見ていません。 しかし、英語版、というのも珍しいのでは?歌詞は、音楽と馴染んでいて気にはならない程度でしたか?この歌手陣なら、英語版であっても。機会に恵まれたら聴いてみたいなあと思います。
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dognorah at 2010-02-17 08:29
レイネさん、いつもコメントありがとうございます。プロコフィエフのオペラはDVDで「三つのオレンジへの恋」を持っているものの実演を見るのはこの「賭博師」が初めてです。
英語は特に違和感はなかったです。大変わかり易い発声で、字幕なしで聞き取れる部分が多かったです。
こんんちは。土曜日の最終日の公演を観てきました。歌、演奏、舞台いずれも、素晴らしい出来だと思いました。あらすじを書いて頂いていたので助かりました。あらすじのご紹介にあたって、勝手ながらリンクを張らせて頂きましたので、よろしくお願いします。
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dognorah at 2010-03-01 07:10
確かに出来のいい公演でしたよね。再演の時に行くかどうかはその時の歌手次第ですが。リンクはいつでもご自由にどうぞ。
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助六
at 2010-03-01 10:27
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ROHが今でも英語上演を続けてるとは意外でした。字幕が最終的解決というのがほぼ国際的コンセンサスとなった感じですが、英国聴衆の間には字幕を疎んじる人がなお無視しきれないくらいいるということでしょうか。仏聴衆でも聞き取れない仏語オペラ、独聴衆でも聞き取れない独語オペラ上演の方が多いのが現状でしょうから、翻訳上演こそ大きな賭けとも言えますね。今回は一定の成果が上がったようで、歌手の方たちには大きな拍手を送りたいです。昔アームストロングが「カーチャ・カバノヴァ」をパリでは原語、時を措かずDOBでは独語で歌ってるのに遭遇して(指揮者は共にコウトで同じ!)そのプロ振りに仰天したことがあります。
原語じゃないとスター歌手を雇えないという「マネージメント上の」理由もよく引かれますけど、考えてみるとサッカやデノケなら露語より英語で覚えるほうが負担が少ないくらいかも知れませんね。 「賭博者」は96年にパリでゲルギエフとマリンスキーがやってくれたことがありますが、むしろこういうインターナショナルな配役でもう少し軽みのある指揮で聞いてみたいですね。
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dognorah at 2010-03-02 05:21
今度上演する「女狐」も英語なんですよね。こんなポピュラーなオペラなのに。これは私はスキップします。
英国聴衆のことを考えているんじゃなくて、上演する側が楽をしようということだと思います。ご指摘の通り英語にしたからといって全て聞き取れる訳じゃありませんし。私は大いに不満です。
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助六
at 2010-03-02 07:47
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英語翻訳上演の場合英語字幕は付くんですか?
パリでは仏オペラでも必ず仏語歌詞の字幕が付きますね。でなけりゃ絶対解りません。
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dognorah at 2010-03-02 21:29
付きます。ENOもすべての演目で付きます。
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amao
at 2010-03-05 00:13
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ENOは数年前の改修以前は字幕ナシでした。SIGN INTERPRETER付公演が各演目で1回はあり、それを字幕と誤解して出かけ、舞台袖の手話通訳者に驚いたのが懐かしいです。演目が何だったか忘れてしまいましたが、同じ頃ROHでも手話付の公演に遭遇しました。字幕も付いているのに手話も?と驚いた事を記憶しています。
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dognorah at 2010-03-05 02:12
そうですね、やはり解らんという声を無視できなくなったので字幕をつけたんでしょうね。字幕がある状態での手話というのは本当にどういう意味があるのか謎ですね。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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