シュニトケのオペラ「The History of D. Johann Faustus」抜粋

2009年11月18日、RFHにて。

Conductor: Vladimir Jurovski
Dr Faustus: Stephen Richardson (bass)
Mephistophila: Anna Larsson (mezzo-soprano)
Mephistophiles: Andrew Watts (counter-tenor)
Narrator: Markus Brutscher (tenor)
Chamber Choir of the Moscow Conservatory
London Philharmonic Orchestra
Director: Annabel Arden

プログラム
Haydn: Symphony 22 (The Philosopher)
Wagner: Prelude and Good Friday Spell from Parsifal
Schnittke: Excerpts from the opera ‘The History of D. Johann Faustus’

シュニトケはロシアの作曲家ということになっているけれど、彼の体内には一滴だってロシア人の血が入っていないドイツ系の人間らしい。何でも18世紀にドイツ系の女帝Catherine the Greatの誘いでドイツから大量の移民がEngelsという地方に来てそこはソ連時代もドイツ系の連邦として存在していた。彼の両親もドイツ語を話す人達で、従って彼はドイツ文化に惹かれながら成長したらしい。彼の母親は古いドイツ語を話す人で、彼は後年モーツァルトの手紙の中に同種のドイツ語を発見して驚喜したようだ。一方では当然ソ連内の、特にロシア文化の影響も多大に受けており、必然的にロシアと西洋の両文化をミックスした作品スタイルといわれている。今日のプログラムはドイツ移民が始まった年に作曲されたハイドンの交響曲第22番と多大な影響を受けたヴァーグナーの音楽をイントロにして、1994年に作曲されたオペラの抜粋を配したものだ。
オペラのもとになった物語は1587年にフランクフルトで出版されたDas Volksbuch vom Doktor Faustであるが、ここに至るまでにシュニトケは若い頃からファウストの物語に惹かれてトーマス・マンやゲーテなどファウストに関するあらゆる文献を読みあさっていたらしい。
このオペラでは、人生や哲学などあらゆることをもっと深く極めたいという欲求からメフィストを呼び出し、何でもいうことを聞いて貰う代わりに24年後には魂も肉体もメフィストに提供するという契約を結ぶが、期限が来ても満足せず、泣く泣く悪魔に身を捧げるというストーリーである。しかし魂に関しては神の審判が降りるまではメフィストも自由に出来ないと慰められる。ゲーテの物語とは違ってここでは女のメフィストも登場するが、役割はいまいちはっきり理解できなかった。歌詞は当然ドイツ語で、物語の進行役としてナレーターが結構活躍する。
音楽はシュニトケらしい響きでなかなか魅力的である。メフィストフィレスを演じるカウンターテナーがメフィストフィーラを歌うメゾソプラノより高い声域を出しているのじゃないかというくらい高音が伸びていて、独特の雰囲気を出していた。出演者は全てよく声が出ており、満足すべき出来と言える。合唱(ドイツ語なのになぜモスクワから呼んだのか不思議)も立派。
演出は、ナレーターが客席の一部も使って動き回って変化を付けていたのは理解できる。しかしメフィストフィレスが最初はちゃんとした背広を着ていたのに後半はズボンを脱いでハイヒールを履いた姿にしたのはよく理解できない。
抜粋なので大きなことは言えないが、とにかく初めて経験するシュニトケのオペラは大変興味深いものがあった。

この公演は11月24日にBBC Radio 3で放送されるため、出演者は全てマイクを装着しており、ナレーターのものは直接会場のスピーカーで拡声されていた。最後の方では悪魔二人がカラオケのようにマイク片手に歌う部分もあった。

写真は左から指揮者Vladimir Jurovski、演出のAnnabel Arden、ファウストのStephen Richardson、メフィストフィラのAnna Larsson、メフィストフィレスのAndrew Watts、ナレーターのMarkus Brutscher
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by dognorah | 2009-11-22 01:12 | オペラ
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