2009年11月7日、RFHにて。
Gaetano Donizetti: Maria di Rohan (concert performance) Sir Mark Elder: conductor Krassimira Stoyanova: Maria, Countess of Rohan José Bros: Riccardo, Count of Chalais Christopher Purves: Enrico, Duke of Chevreuse Loïc Felix: Armando di Gondi Brindley Sherratt: De Fiesque Graeme Broadbent:Il Visconte di Suze Christopher Turner:Aubry Riccardo Simonetti:Un Familiare di Chevreuse Geoffrey Mitchell Choir Orchestra of the Age of Enlightenment 上演時間は1時間50分程度のマイナーなオペラで、存在を初めて知りました。例によってOpera Raraの公演です。ドニゼッティのオペラでよく耳にするようなメロディ満載の音楽で楽しめます。 主役の二人、クラッシミーラ・ストヤノワとホセ・ブロスが絶好調のすばらしい声で非常に盛り上がった公演となりました。二人とも透明感のある美声で高音も伸び伸びとして気持ちのいい歌唱です。 ストヤノワはヴィーンで見た「フィガロの結婚」の伯爵夫人で初めて聴いて以来これで3回目の経験ですが必ず満足を与えてくれるポーランド人ソプラノです。 スペイン人テノール、ホセ・ブロスもヴィーンで見た「清教徒」のアルトゥーロで初めて聴き、次いで「パリシーナ」のウーゴ役をロンドンで聴いたのでやはりこれが3回目で同じくいつも満足を与えてくれる歌唱で非常に安定していますね。フローレスよりほんのちょっと重めの声です。 次いで重要な役であるエンリーコ役はイギリスのバリトン、クリストファー・パーヴェスによって歌われましたが、大略いい歌唱だったものの全面的には感心できずちょっと残念です。一部音域でやや不安定で魅力を欠く声でした。 他の役所はそれほど大した台詞は無いし今日の出演者で十分の出来です。 合唱はほとんどが第1幕で歌われますが、文句なしの出来でした。 マーク・エルダーの指揮するOAE管は美しいアンサンブルと古楽器とは思えないほどの迫力で感嘆すべき演奏でした。感情の起伏をメリハリたっぷりで歌わせる指揮振りはさすがドニゼッティを得意とするエルダーらしい出来です。 終演後の盛大な拍手に応えて、珍しく主役二人によるアンコールが演奏されました。第1幕で歌われる美しい二重唱です。 José Bros and Krassimira Stoyanova 会場では録音されていませんでしたが、本日とほぼ同じ出演者でスタジオ録音されて2011年にCDが発売されるそうです。 なお、イタリア語リブレットなので舞台ではマリア・ディ・ロハンと発音されますが、フランスの物語ということで日本ではロアンと表記されるようです。 あらすじ ルイ13世が統治するパリのルーヴル宮廷での話。マリアと秘密裏に結婚しているエンリーコは禁止されている決闘で時の宰相リシュリューの甥を殺したため逮捕されて死刑の宣告をされている。マリアは彼を助けるため自分を愛してくれているリッカルド(王の信任が厚い)に会いに行き、王に釈放を取りなしてくれるよう依頼する。彼等の結婚の事実をまだ知らず、エンリーコを単なる恋敵と思っているリッカルドは悩むが意を決して王に頼みに行く。それは奏効してエンリーコは釈放される。そうこうしているうちに宰相リシュリューは解任されたというニュースが伝わり、甥の結婚相手にマリアをと考えていたリシュリューを恐れて秘密にしていた結婚をエンリーコは公にする。次いで、王から使者が来てリッカルドに宰相となるよう依頼される。しかしリッカルドはある男から決闘の挑戦を受けていて法に反してそれを遂行しようとしているため、王の申し出を断る。そして決闘の準備をするが、彼を恩人と思っているエンリーコは彼と共に決闘に参加することにする。そうこうしている間にリシュリューが再び宰相に任命されたというニュースが伝わり、リシュリューは政敵を葬るためにリッカルドの家を家宅捜査し、全ての書類を押収する。その中にマリアに宛てた恋文があり、それは宰相の差し金でエンリーコに渡される。激怒したエンリーコは彼の居所をリシュリューの捜索隊に知らせるとともに自身で彼を殺そうとする。マリアと一緒の逃亡を企てていたリッカルドは絶望してピストル自殺をする。マリアは夫に自分も殺してくれるよう頼むが、エンリーコは一生恥知らずな女として生きろ、と冷たく言い放つ。
by dognorah
| 2009-11-08 23:28
| オペラ
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Comments(5)
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bonnjour at 2009-11-10 00:41
いかにもオペラらしいドロドロした愛憎劇風のストーリーですが、それがベルカントの音楽に乗ると、どんな感じなのでしょう。ドニゼッティは大量のオペラを書いたようですが、現在では「愛の妙薬」や「ルチア」などの定番を除くと、あまり演奏されていませんね。今では演奏されなくなってしまった作品にも、実は優れたものが混じっているのかもしれませんね。
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dognorah at 2009-11-10 03:02
50年という短い生涯で70曲以上のオペラを書いたドニゼッティは驚くべき創作力ですが、全てがいいというわけではないようで中にはへんてこなストーリーもありますね。しかしOpera Raraなどが取り上げて上演しているものはストーリーはともかく音楽的には聴き応えのあるものが多いです。少なくとも主役達が歌うアリアはなかなかのものです。管弦楽などは他のオペラで使ったようなメロディも使い回している節がありますが。従って大体はドニゼッティ節とでも形容したくなるような印象を受けます。でも、優れた音楽を掘り起こして聴かせて貰えるのはすばらしいことなのでこの種の公演はコンサート形式でも行くようにしています。ここ1年以内だけでも「パリシーナ」「ロベルト・デヴリュー」「シャモニーのリンダ」に次いでこれで4つ目のマイナーオペラです。全てとても楽しめました。なかなか会場は満席というわけにはいきませんが。今回の歌手二人の実力からすればもっと多くの人が聴いてもいいじゃない、と思いましたが知名度的にはそれほどじゃないので仕方がないですかね。
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助六
at 2009-11-11 07:16
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>1年以内だけでも「パリシーナ」「ロベルト・デヴリュー」「シャモニーのリンダ」に次いでこれで4つ目
いやロンドンとdognorahさんはすごい!私は「パリジーナ」や「ロアン」は実演に接したことないですし、ピリオド楽器という点でもドニゼッティ実践の最先端ですね。スタヤノワ連れてきただけだって大したもの! ドニゼッティ・ルネサンスは60年代イタリアで始まった形なんでしょうが、70年代から主舞台はロンドンに移り、ベルガモなんかかなわない。例のチェルシー・グループ、BBCのシリーズ、ドニゼッティ・ソサイエティ、オペラ・ラーラと19世紀イタ・オペの考究と復興を主導してきたのは英で、19世紀仏オペラについても事情は同じ。英楽壇の奥の深さに改めて感じ入ります。民間グループがスポンサー見つけて目覚しい成果を上げてるのも、放送局と一部の公的劇場頼りの大陸に比べてある種の教訓になってますね。
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助六
at 2009-11-11 07:16
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オペラ・ラーラの公演は録音準備という形でしょうか? 以前から録音と前後してコンサートもやってたんでしょうか? RFHでのシリーズの形になったのはいつ頃から? 主催はどこでサウスバンクセンターは小屋貸してるにすぎない形なんでしょうか? 色々興味惹かれます。
以前フンメルさんの素晴らしいエントリにコメントさせて頂いたことがあったんですが、ドニゼッティのいくつかの作品には、私は紛うかたなき天才の輝きを感じます。 ttp://hamburg.exblog.jp/1072949
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dognorah at 2009-11-12 07:30
ドニゼッティ好きの助六さんでさえまだ実演に接しておられない演目を私が聴いたとは確かにロンドンも大したものですね。尤も、助六さんが仰る傑作群の「アンナ・ボレナ」「マリア・ステュアルダ」「ポリュート」はまだ聴いていませんが(恐らく過去には公演があったことでしょう)。今年はこれに加えて「愛の妙薬」も見ていますのでロンドンで5つもドニゼッティを聴けたわけで、ヘンデルイヤーと言いながら4つしか公演されなかったヘンデルよりも多いというのは凄いですね。Opera Raraの公演に行きだしたのは最近のことなので歴史的なことはよく知りませんが、ドニゼッティはロンドンという評価には多くの貢献をしてきたのでしょう。普通は公演時にマイクを立てて会場録音をしていますが、今回のように録音はスタジオでというのは初めて見ました。また、他の団体の公演に録音で参加というのもあり、9月のROH公演「シャモニーのリンダ」がそうでした。サウスバンクセンターは小屋を貸しているだけと思います。
フンメルさんのエントリーは再読してみましたが、なんだかベルガモに行ってみたくなりました。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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