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ロンドンのナショナルギャラリーにあるフェルメール

イギリスには全部で5枚のフェルメールがある。1枚はエディンバラにあるが、あとの4枚はロンドンにある。そのうち2枚はナショナルギャラリー、1枚はバッキンガムパレス絵画館、もう一枚はケンウッド美術館である。

過去にこれら5枚の絵はすべて見ているのだけれど、もう印象を書けるほどの記憶が残っていない。

ナショナルギャラリーにあるのは次の小型の油絵2枚(写真参照)で、最近改めて見に行ったので感想を述べてみたい。ちなみに、ナショナルギャラリーではメインの通路からちょっと外れた小部屋にこの2枚は飾ってあり、あまりわさわさした雰囲気ではないのが好もしい。
ヴァージナルズの前に立つ婦人 52x45cm
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ヴァージナルズの前に座る婦人 52x45cm
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この2枚は大きさが同じで、テーマも似ている、制作年代(1673-1675)も同じということで、もとからペアにして描かれた作品ということになっているらしい。最晩年の作品でもある。

ともに貴婦人の晴れやかな心の状態が顔の表情と壁にかかる絵画による寓意で表現されている。

立つ婦人の絵は窓から差し込む光による室内の具合がすばらしく、暖かくてしっとり落ち着いた様子がなんとも魅力的である。特に壁が名人芸で、近代の画家のユトリロの描く壁に相通ずるものがある。そういう状況は写真ではとても表せない点で、これは実物を見るしかない。そういう全体の構成から見て、絵としての完成度からは壁にかかるキューピッドの絵など無い方がいいと思うのだが。ドレスデンにある「窓際で手紙を読む少女」ではそのような寓意的意味を持つ装飾画は画家の手によって抹消された、ということだがこの絵でも抹消して欲しかった。

一方、座っている婦人が描かれているものは、光の来る方向が手前からというのはわかるが窓のように明示的ではない。その分、光の扱いがフェルメールのものにしてはおとなしい。しかし人物の存在がより必然性を感じさせる構成になっている。2枚の絵のどちらかを選べといわれたら絵画としてのバランスの点から私はこちらを選ぶ。人物と部屋の相互関係がしっくりしていて、より落ち着きがある、というかより味わいがある。ヴァージナルズの側面の装飾の仕上げなども精緻そのものだ。

去年か一昨年かもう忘れてしまったが、日本で開催されたフェルメール展がロンドンに流れてきてかなりの作品を見たのだが(悔しいことに真珠のイアリングの少女だけ省かれていた)、混んでいてじっくり見る雰囲気ではなかった。

この人に限らないが、絵画というものは一点をじっくり見ると相当印象が異なるものだ。

これからはそういう観点で見ていくことも真剣に考えようと思っている。とりあえずはロンドンにある残り2点を再訪するつもりである。
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by dognorah | 2005-03-27 01:49 | 美術
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