マイヤーの「フィデリオ」公演(コンサート形式)- PROM50

2009年8月22日,RAHにて。

Fidelio
Music: Ludwich van Beethoven
Libretto: Joseph von Sonnleithner & George Friedrich Treitschke

出演
Waltraud Meier: Leonore
Simon O'Neill: Florestan
Gerd Grochowski: Don Pizarro
Sir John Tomlinson: Rocco
Adriana Kučerová: Marzelline
Stephen Rügamer: Jacquino
Viktor Rud: Don Fernando

BBC Singers
Geoffrey Mitchell Choir
West-Eastern Divan Orchestra
Daniel Barenboim: conductor

コンサート形式とはいえこれがバレンボイムのロンドンオペラデビューだそうだ。ちょっと型破りの公演で、英語によるナレーションが要所要所で入る。英文はWest-Eastern Divan Orchestraの共同設立者であるエドワード・サイードが書いたもので、フィデリオの一人称で話される。そしてナレーションを担当したのはヴァルトラウト・マイヤー自身である。最初は生の声で話していたがすぐに録音したものに切り替わった。
更に、もう一つの特徴はフィデリオ序曲を演奏せず、代わりにレオノーレ序曲第3番を演奏してオペラが始まったことである。以前はフィデリオ序曲を演奏して、第2幕冒頭でレオノーレ序曲を演奏するという形式が結構あったらしいが私はオペラでもコンサート形式でも経験したことがない。序曲としてはレオノーレ第3番の方が聴き応えがあるので今日の折衷的演奏方法は歓迎である。なお、トランペットはこの序曲の時だけホール後方のどこかで鳴らしていたがオペラの中ではでは舞台裏から聞こえてきた。

演奏は歌手に人を得たこともありさすがにすばらしいものだった。第2幕冒頭のオケの深味のある表現と緊張感は思わず固唾を飲むものだった。バレンボイムはいつものように暗譜で指揮。

歌手ではトムリンソン、マイヤー、オニールの3人が迫力と歌唱の上手さで存在感が大きい。マイヤーは第1幕では(特に終盤のアリア)気高い声と歌の上手さで唸らせたが、第2幕では声に艶が無くなったり高音がかなり苦しそうな場面が多かったので好調とは言えなかったようだ。トムリンソンとオニールは絶好調と思える完璧な歌唱だ。トムリンソンの艶のある低音とニュアンス豊かな歌唱はいつもながら惚れ惚れする。第2幕冒頭でのオニールの第一声には伸びのある美しい高音と緊張感がありながら決して硬くならない歌唱には会場中がウットリしたことだろう。たった一人楽譜を見ながら歌ったアドリアナ・クチェロヴァもなかなか魅力的な歌唱で印象的だ。グロチョフスキーは今年2月のミラノでの「トリスタンとイゾルデ」と5月のROHでの「ローエングリン」で好感を持った歌手だが、今回は上の3人と比べると声量がいまいちということが分かった。他の歌手はまあそこそこ。合唱はアンサンブル的にはあまり印象的ではない。

演奏直後のWaltraud MeierとSimon O'Neill。右端はAdriana Kučerová
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次はSir John TomlinsonとWaltraud Meier
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以下の写真はBBCのTV画面から演奏中のスナップショット
Daniel Barenboim
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Waltraud Meier
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Sir John Tomlinson
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Simon O'Neill
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Adriana Kučerová
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Gerd Grochowski
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このオケはバレンボイムとサイードが共同で設立して丁度10年らしいが、恐らく困難なことはいっぱいあったであろう。よく10年間活動してきたものだ。非常に上手いというわけではないにしてもかなりの水準ではある。今後の発展を祈りたい。歌手のカーテンコールが終了した後一人で出てきたバレンボイムは今回のロンドン公演が終わったということでスピーチを一席。音楽によって和を達成するのはすばらしいことで、その逆があってはならない等と例によって中東を念頭に置いた平和への祈念を表明し、その後オケの全メンバーと握手を交わしていった。なお、まだ10代前半と思われるバレンボイムの息子が第1ヴァイオリンのポジションで演奏に参加していた。
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by dognorah | 2009-08-27 01:25 | オペラ
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