チャイコフスキーのオペラ「イオランタ」公演

2009年7月27日、バーデンバーデン祝祭劇場にて。

Iolantha: Lirische Oper in einem Akt
Music: Peter Tchaikovsky
Libretto: Modest Tchaikovsky

Conductor: Valery Gergiev
Director: Mariusz Trelinski

Iolantha: Anna Netrebko
Graf Vaudémont: Piotr Beczala
René: Mikhail Kit
Robert: Alexei Markov
Ebn-Chakia: Alexander Gergalov
Almerik: Andrei Zorin
Bertran: Fyodor Kuznetsov
Marta: Natalia Evstafieva
Brigitta: Eleonora Vindau
Laura: Ekaterina Sergeeva

あらすじ
プロヴァンスの王、ルネには娘がいるが生まれながらの盲目で、本人はそれが正常な状態と教育し、周りのものにも真実を伝えてはならないと厳命を下している。また娘には自分が王であるとは伝えず、単なる騎士だと偽っている。幼少の頃から貴族のロベルトと婚約させているが、ロベルトの方は彼女を見たこともなく、勝手に好きな人を見つけて結婚するならそちらと思っている。ルネ王も結婚式は彼女の盲目が直らないとと思っているので、モーリシャスから高名な医者を連れてきて盲目を治療しようとしている。彼女の住む屋敷には庭園を通じて裏口があり、そこには何人もここへ立ち入ったものは死刑という警告看板が立てられている。ある日、森を散歩している間に道に迷ったロベルトとその親友であるヴォーデモンはその裏口の付近に来てしまう。警告が気にはなったが好奇心にそそられてヴォーデモンは屋敷の庭に入ってしまう。偶然屋敷から庭に出ていたイオランタを見つけ、その美しさに我を忘れ彼女と会話をするが、彼女も彼の受け答えに心をときめかす。しかし薔薇の花の色に関する会話から彼女が盲目であることが分かってしまう。そして彼女も自分の目が正常でないことを知ってしまう。そこへ医者を連れたルネが現れ、状況に立腹してヴォーデモンに死刑を言い渡す。イオランタの必死の取りなしでやや心を和らげ、もし治療がうまくいって彼女の盲目が直れば許すということになる。本人が直りたいという強い意志を示すことが治療開始の条件と医者が言うのに対して、恋する彼女は是非直して欲しいと希望し、治療が始まる。そしてそれは成功する。自由の身となったヴォーデモンは彼女と結婚したいと申し出るが、既に婚約者がいるので駄目だといわれる。そこへ当の婚約者ロベルトがやってきて、実は自分には他に好きな人がいるので婚約は取り消して欲しいと懇願し、めでたくヴォーデモンとイオランタは結ばれることになる。
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このオペラは100分程度の長さで、以前ロンドンでコンサート形式で聴いたことがあります。そのときは音楽に感動し、是非舞台を見てみたいものだと述べましたが、ネトレプコが主演することが動機となってバーデン・バーデンまで見に来たのでした。しかもゲルギエフ指揮のマリンスキー劇場の引っ越し公演なので、お国もののオペラには期待が持てます。事実、歌手が全てすばらしかったこともあって大変楽しめました。

ネトレプコは期待通り例の美声が満開でしたし歌唱的にも演技的にも納得行くものですが、必要な最高音はやや苦しそうなところがありました。衣装はタイトスカートの時もあり、ウェストはやはり太いままというのがよく分かります。でもここでも人気は絶大でカーテンコールは大拍手歓声でした。
女声陣ではメゾソプラノのナタリア・エフスタフィーワも魅力的な声を持っている人で印象的でした。合唱は女声合唱だけですが、全員メード服でピットに収まって歌っていて、え?と思いましたが最後の場面で舞台上に出る演出だったので納得です。上手かったです。

当初予定されていたビリャソンの代わりに出演したベチャラはもう何度もネトレプコと共演してお馴染みコンビとなっていますが、絶好調で言うことなしの歌唱でした。実はロベルト役のバリトン、アレクセイ・マルコフもすばらしくて、ベチャラより前に歌うアリアで大絶賛を受けたこともあってベチャラも張り切ったのでしょう。こういう相乗効果は良いですね。そのマルコフですがキーンリーサイドのように高音が華やかで声量もありとても魅力的に歌う人です。その他の低音歌手達も立派でした。

舞台は一面だけ壁とドアのある直方体の部屋が中央に置かれ、それが随時回転して壁が手前に来たときは庭の描写になると共に、壁の向こうで部屋の配置を換えたり衣装を替えたりする機能も果たすシンプルなものです。服装はかなり現代的で、ベチャラなどジャンパー姿です。演出家はなぜかオオカミが鹿などを狩るイメージを重ねたいらしく、オペラハウスのロビーには大きな3匹のオオカミが戯れている様を表現した剥製が置かれていたり、序曲の間中そういう関連のビデオが写されているし、部屋の壁には鹿など角を持った動物の頭蓋骨が一杯飾られていたり、劇の進行中に上から血だらけの大きな鹿の死体が落ちてきたり、と訳の分からないことが一杯。人間の動きには特に不自然さはなく、オペラの邪魔にはなりませんが。

ゲルギエフ指揮のマリンスキー管弦楽団は緻密な表現ですばらしい演奏でした。彼等はこの後中一日おいてロンドンで「ニーベルンクの指輪」を4夜連続で演奏するというタフさ。もちろん私もその中一日の間にロンドンに帰ってそれにつきあうわけですが。

カーテンコール時の舞台
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Piotr Beczala and Anna Netrebko
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Mikhail Kit(ルネ王)、この人は3日後にはロンドンでヴォータンを歌います。
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Alexei Markov(ロベルト)
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by dognorah | 2009-07-31 21:43 | オペラ
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