ベルクのオペラ「ルル」新演出初日

2009年6月4日、ROHにて。

Lulu: Opera in a prologue and three acts
Music: Alban Berg, with Act III realized by Friedrich Cerha
Libretto: Alban Berg, after the plays “Erdgeist” and “Die Büchse der Pandora” by Frank Wedekind

ロイヤルオペラでこれを上演するのは1983年以来26年ぶりなので新演出となりましたが、モノクロの世界で無感情に物語を進めていく意図は理解できるものの演劇としては酷い舞台です。同じクリストフ・ロイの演出で公演された2003年の「ランメルモールのルチア」を思い出させる何もない白と黒の舞台で、出演者の服装も白と黒しか使わないもの。演技も表情も淡泊で、コンサート形式とほぼ同じ。これのDVDはBechtolf演出のチューリッヒ歌劇場版を持っていますが、濃厚なエロティシズムを織り交ぜた美しい舞台で、私にはそういう方が遙かに納得できる演出です。
レアルマドリードとの共同制作だから予算はあるはずなのにこういう作りということは、次に上演するのは数十年先だからセットを保存する手間が省けるとでも考えたか。こんなことをするならコンサート形式で上演して欲しいです。演出家達に支払う費用を節約できるから入場料も安くなるし。初日なので演出家も舞台に出てきましたが舞台そばから思い切り「ブー」を浴びせてあげました。場内からももちろんブーや野次が飛んでいました。この人が来期の「トリスタンとイゾルデ」を演出することになっているとはがっかりです。コンサート形式を聴きに行く覚悟をしておいた方が良いかもしれません。しかし「ナキソス島のアリアドネ」ではかなりまともな演出もしているので一縷の望みはありますが。
なお、台詞の部分ではマイクを通してスピーカーを響かせる手法を取っていました。歌の部分も含めて会話のテンポが速く、私の英語力では字幕を読み切れないです。そのせいか、音楽はとてもすばらしいのですが舞台進行の方はやや退屈でした。

演出はそういう次第ですが、歌手はすばらしい。
まずタイトルロールを歌ったスェーデン人ソプラノ、アグネータ・アイヒェンホルツですがリリカルでよく伸びる高音が美しい。細身の美人ながらニヒルな表情が演出家の意図に合っているともいえます。そういえば彼女はロイの演出するオペラにあちこちで出演しているので彼のお気に入りなのかもしれません。
ゲシュヴィッツ伯爵夫人を歌ったアメリカ人メゾソプラノ、ジェニファー・ラーモアもリリカルな声でよい歌唱でした。
シェーン博士を歌ったドイツ人バリトン、ミヒャエル・フォレもいつものように愛想のない表情ですが高水準の歌唱で立派。
ROH初登場のクラウス・フローリアン・フォークトはこの人を初めて聴いたヴィーンでの「ローエングリン」のときの声とほぼ同じで気持ちよく透明な高音が出ていました。
他の歌手も概ね良かったのですが、ピーター・ローズはあまり好みじゃないです。

パッパーノ指揮するROH管弦楽団はベルクの濃厚な音楽を美しく響かせていました。

以下の写真はカーテンコールのものです。
Agneta Eichenholz as Lulu
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Klaus Florian Vogt as Alwa (right) and Will Hartmann
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Michael Volle as Dr Schön/Jack the Ripper and Jennifer Larmore as Countess Geschwitz
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Christof Loy and Antonio Pappano
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出演
Conductor: Antonio Pappano
Director: Christof Loy
Lulu: Agneta Eichenholz
Countess Geschwitz: Jennifer Larmore
Dr Schön / Jack the Ripper: Michael Volle
Alwa: Klaus Florian Vogt
Schigolch: Gwynne Howell
Animal Trainer / Athlete: Peter Rose
Dresser / Schoolboy / Groom: Heather Shipp
Prince / Manservant / Marquis: Philip Langridge
Mother: Frances McCafferty
Painter / Negro: Will Hartmann
Professor of Medicine: Jeremy White
15 year-old Girl: Simona Mihai
Lady Artist: Monika-Evelin Liiv
Journalist: Kostas Smoriginas
Manservant: Vuyani Mlinde
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by dognorah | 2009-06-06 00:49 | オペラ
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