2009年3月16日、ヴィーン国立歌劇場にて。
Maestro Seiji Ozawa Eugen Onegin Lyrische Szenen in drei Akten Text von Peter Iljitsch Tschaikowski und Konstantin Schilowski nach dem Verstroman von Alexander Puschkin Musik von Peter Iljitsch Tschaikowski 舞台は簡素で象徴的、衣装もやや現代的ですが、特に読替もなくわかりやすい演出でした。しかし第3幕の図書室がなぜ屋外の大階段のままなのかよく分かりません。各場面で下りる幕はいつものえんじ色のものではなく白布にして時には筆記体でOneginと投射してみたり、手紙の内容を投射したりしていますが特に意味深長というわけではありません。また合唱団や俳優を多く使って賑やかでアクロバット好きではありますが人物の動きや配置は分かりやすいものです。 歌手ではキーンリーサイドとイヴェリが好調で、ラモン・バルガスは絶不調でした。 キーンリーサイドはバリトンながらテノールを思わせる伸びやかで艶のある美声がよく出てアリアでもカーテンコールでも今夜の一番人気でした。 タマル・イヴェリは最初はごく普通の声でしたがだんだん調子が上がっていって、第3幕では絶品ともいうべき歌唱で大感動。声のコントロールが凄くて消え入るようなピアニッシモでも掠れることなく美声が続きました。この場面はキーンリーサイドの必死で哀願する様が伝わる歌唱と小澤指揮のオケの流麗さも相俟って類い希な叙情性が感じられました。 バルガスは美声の持ち主で以前何回か聴いたときはいつもよかった印象を持っているのですが、今回は遂にその美声が聴けず、残念です。喉の調子が悪かったのでしょう。 (修正とお詫び:最初に書いた文章では彼がMETのガラに出演したためにNYからとんぼ返りの強行スケジュール云々と書いてしまいましたが、NY在住の友人から彼は出演していなかったとの情報を得て、その件を削除しました。125周年とオープニングガラを取り違えて出演者を見ていたというミスでした。) その他の歌手ではオルガを歌ったナディア・クラステワは歌でも演技でもお転婆娘を好演していました。プリンス・グレミンを歌ったアイン・アンガーもまずまず。タチアナの誕生パーティで歌うフランス人、Triquet役もなかなか上手い。 指揮の小澤は暗譜で、指揮棒なしでした。旋律をよく歌わせた流麗な演奏で大変自然です。オケはヴィーン・フィルが海外遠征中なので主力がいなかったのですが、充分美しいアンサンブルでした。しかし弦のしなやかさなどはやはりいつもほどではなかった気がします。 今日の観客は日本人だらけと言っていいくらい大勢の日本人がいました。こんなに多いのは初めて見ました。小澤さんが指揮するというだけでこんなに集まるとは凄いですね。 トップの写真は滅多に観客に顔を向けない小澤さんが正面を向いたところ。 下の写真は第2幕終了後帰宅してしまったバルガスとクラステワです。 Ramón Vargas as Lenski and Nadia Krasteva as Olga 次は第2幕終了後のキーンリーサイドとイヴェリです。 Simon Keenlyside as Onegin and Tamar Iveri as Tatjana その次は終演後のカーテンコールで小澤さんを挟んで。イヴェリが持っている花束は小澤さん宛に投げられたものですが、さっさと彼女に渡してしまったもの。 Tamar Iveri, Seiji Ozawa and Simon Keenlyside Dirigent: Seiji Ozawa Inszenierung: Falk Richter Tatjana, Tochter von Larina: Tamar Iveri Olga, Tochter von Larina: Nadia Krasteva Eugen Onegin: Simon Keenlyside Lensky, Dichter: Ramón Vargas Fürst Gremin: Ain Anger Larina: Aura Twarowska Filipjewna: Margareta Hintermeier Ein Hauptmann: Hans Peter Kammerer Saretzki: Marcus Pelz Triquet: Alexander Kaimbacher Ein Vorsänger: Wolfram Igor Derntl
by dognorah
| 2009-03-19 09:47
| オペラ
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Comments(6)
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Sardanapalus
at 2009-03-19 17:30
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さっそくの記事ありがとうございます!写真も素敵です。小澤さん効果で日本人が多いのですね?予想はしていましたが、この時期円高で旅費も安くなっていますしね~。今夜も日本人ばかりかもしれませんね。この演出が呼び水になったのか、今日は現実世界も雪ですよ…寒い!
でも、ヴァルガス不調だったのですか??強行スケジュールがたたったのでしょうけど、今日は復調していて欲しいものです。歌えないヴァルガスではちょっと…(^_^;)ほかの歌手は安定しているようなのでとても楽しみです。
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出張ついで
at 2009-03-19 20:15
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この演出は、昨年に上野の「オペラの森」で上演したものと同じですよね?
あれは、小沢の演奏はよかったけど、演出には感心するところはまったくありませんでしたし、オネーギンが全然2枚目でなくて腹が出ていて気分が乗らないとか、不満がありました。キーンリサイドがオネーギンでうらやましい。
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dognorah at 2009-03-20 00:04
Sardanapalus さん、今日ご覧になるんですか?ヴァルガスがMETに出演したというのは誤りでした。済みません。復調していればいいですね。
本当だ、雪の予報になっていますね。最高気温が3度!ロンドンは暖かいですよ。
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dognorah at 2009-03-20 00:10
出張ついでさん、その通りです。「東京オペラの森」との共作と書いてありました。現代的演出というのはどうしてもこういう形になってしまいますね。私は最低限音楽を邪魔しないものならまあいいかと思ってしまいます。古典的な舞台だとロイヤルオペラのものしか見たことがないですが、今回のものよりずっといいですよ。
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Sardanapalus
at 2009-03-20 07:21
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戻ってきました(笑)雪は、朝とお昼過ぎに降りました。美術史美術館から出てきたら一面白くなっていてちょっとビックリ。こんな天気だったので、幕が開いて雪が降っているのを見た観客から失笑が漏れていました。また雪!?みたいな(^^;)
ヴァルガスは、今日は80パーセントくらいの出来でしたから、レンスキーとしては合格、あのアリアにはいっぱいブラボーが飛んでいました。タチアーナ役のイベリも大喝采を浴びていました。dognorahさんもおっしゃっているピアニッシモの美しさもすばらしかったし、演技力もあるので引き込まれました。キーンリーサイドは、悪くはないけど絶好調ということもなく80パーセントくらいの出来だったと思います。3幕は演技も歌も全開で緊張感があり、珍しくオネーギンが不憫に思えましたけど、今日はタチアーナとヴァルガスのほうが歓声が大きかったですね。 ちなみに、一番大好評だったのは小澤さんとオケでした。オペラのオケなのにあのレベルの演奏で、いつもより劣るなんて…ウィーンは本当に恵まれていますね~。ほかのオペラハウスのオケにもがんばってほしいなぁ。
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dognorah at 2009-03-20 10:20
Sardanapalusさん、コメントお待ちしていました。ヴァルガスとキーンリーサイドが共に80%の出来ですか。やっぱり生身の歌手はその日によって違うんですね。その点イヴェリは立派ですね。
ヴィーンのオケだって酷いときがあるんですよ。指揮者とかぶっつけ本番とかいろいろ理由があるようですが。今回は小澤さんだしリハーサルもちゃんとしたようだし恵まれた環境だったのでしょう。 22日も見るんですか?
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