ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」METライヴ中継

2009年2月7日、BFI IMAXにて。

以前からWaterloo駅近くにあるIMAXは気になる存在ではあったが入るのは初めてである。上映する部屋はたった一つしかないのだが、入って、ヒェー、でかいスクリーン!とびっくり。後ろから4番目の席を選んだが、最後列で充分。前席との段差が充分あるので前にイギリスの大男が座っていても邪魔されることはない。天井は高いし座席数も450とあまり多くないので気持ちよく鑑賞できる映画館だ。

METライヴを見るのも初めてだが、さすがHDというだけあってこの大画面なのに通常の映画並みの緻密な映像で美しい。音は映画館の音響装置に依存するが、ここはまあまあの音質であった。オペラが始まってしばらくはちょっと映像と音声のズレがあったが暫くして直った。インターヴァルには舞台裏の模様替え大忙しの場面を背景にナタリー・ドゥセがインタヴュアになって歌手達をインタヴューするのだが、今日の出演者は英語のnative speakerが誰もいず、訊く方も答える方もあまり突っ込んだ話はなく、とんちんかんなやりとりもあってイギリス人観客達の失笑を買っていた。私でさえ笑ってしまったぞ。せめてインタヴュアぐらいアメリカ人を使うべきだろう。ナタリーは失格。

さてオペラだが、充分楽しめた。歌手は全て良かった。
注目のネトレプコは衣装の関係であまりはっきり分からないものの、下半身デブになったかなという体型ながら顔はそれほどふくよかではなく、以前のイメージそのまま。声も以前と同じく美声のまま。これに先立つ公演のレヴューを読んでみると、ルチアという役に求められている歌唱は最高音も含めて実現されず、技術的にはかなりごまかしがあるとのこと。私にはそういう技術的なことは分からないけれど(ロンドンの新聞Financial Timesによると、昨年の同じ公演で歌ったダムラウの方が遙かに技術的にしっかりした歌唱だったらしい)、大好きな彼女のあの歌い方と声の出し方が健在で安心したのであります。役柄に必要な細やかな表情や演技などはほとんど無かったけれど。

ロランド・ビリャソンは不調で3日の公演から降板し、3日はジュゼッペ・フィリアノーティが代役を務め、今日はピョートル・ベチャラが代役だった。ショートノーティスでしかも2日前にMETでレンスキーを歌ったばかりというのにとても立派なエドガルドだった。風貌もビリャソンよりは見栄えがするし、これはなかなかいい。ただ、弱音でちょっと声が汚れる感じがしたが。

エンリーコを歌ったマリウス・キーチェンは利己主義の兄としての演技も声も文句なし。迫力ある歌唱だった。
ライモンド役のバス、イルダール・アブドラザコフもいい歌手だ。

マルコ・アルミリアートの指揮は非常にこなれたものでこれも文句なし。
演出は、スコットランドの幽霊の出る古城にヒントを得たとかで、ルチアも最後は幽霊になってエドガルドの自殺を幇助する場面もあるが、全体的にはよくできた伝統的なもの。舞台セットはなかなか凝っていて、第1幕のスコットランドのヒースを模したという草の生えた地面はとても良くできている。インターヴァルに分解するところを映していたが作る人は大変だったろうなと思わせるもの。大がかりな舞台装置なので各幕の転換にはかなり時間を費やしていたが、第3幕の螺旋階段がある屋敷の部屋から墓場への転換は見事に早かった。

ということで舞台も歌手も大変感銘を受けた公演でした。入場料がちょっと高いのが難点だが、座席はかなり埋まっていた。

Lutia di Lammermoor
Music: Gaetano Donizetti
Libretto: Salvadore Cammarano

Conductor: Marco Armiliato
Director: Mary Zimmerman
Lucia: Anna Netrebko
Edgardo: Piotr Beczala
Enrico: Mariusz Kwiecien
Raimondo: Ildar Abdrazakov
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by dognorah | 2009-02-09 03:16 | オペラ
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