マーク・ロスコ展

Tate Modernで昨秋から開催中のものを見てきました。展示の趣旨をよく読まずにとにかくもうすぐ終了するので雨が降って無くて寒くない日を選んで見に行ったのですが、画業を概観するものではなく、次のようにちょっと特殊な集め方をした感じです。

(1)ニューヨークのシーグラムビルにあるレストラン四季のために描かれた壁画大作を15点集めたもの(制作年は1958年と1959年)
(2)Black on Blackシリーズ (1964年)
(3)Brown and Grayシリーズ (1964年)
(4)Black on Grayシリーズ (1969、1970年)
(5)その他数点(1958、1964年)

レストラン用は30点ぐらい制作されたようですが、結局レストランに展示されることなく、各地の美術館に寄贈されたとのことです。その中の9点がテートにあり、7点が佐倉市の川村美術館にあります(これは寄贈じゃないそうです)。今回は川村美術館から5点が(なぜ全部来ないのか不思議ですが)、ワシントン・ナショナル・ギャラリーから1点が貸し出されてテート分と合わせて合計15点が展示されています。ただ、それぞれが大作なだけに15点を全て展示できるだけの部屋が無く、一番大きい部屋に14点を掛け、残り1点は隣の部屋に掛けてあります。部屋には何人かの人たちがじっと座って絵が支配する空間を楽しんでいる様子ですが、私も何ともいえないこの雰囲気に魅せられて、じっと座っていたり、あるいは一枚一枚の大きな絵の前に佇んでみたりと随分時間を費やしました。最後は「閉館ですから」という係員の要請で渋々出ていきましたが、時間さえあればいつまでもいたい空間でした。何を描いたか分からないこれらの絵なのになぜこんなにほっとする気持ちになれるのでしょう。以前テートにあったロスコルームで感じたのとはまた違って今回の方がよりコージーな感覚にとらわれたのは明らかに川村美術館などの作品群が加わったせいでしょう。

今回数十点の作品を見て感じたのはロスコが色の創出に凄くこだわっていたということで、暗い色調の色の組み合わせをじっくり観察すると、各色自体が重要な意味を持ち、更にそれぞれのの微妙なニュアンスの違いで何か複雑なメッセージを発信していることに気付きます。その色は練りに練って作り出されたもののようで、美術館側も赤外線など科学的手法を駆使してロスコがどういう風にこの色を作り出したかを解説したコーナーを設けています。とにかくキャンヴァスの前に立つと各色と組み合わせの両方に魅せられて佇んでしまいます。例えば次の絵など。
Untitled 1964, Collection of Kate Rothko Prizel
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Brown and Grayシリーズではそれぞれの色の塗り方がややラフで、また作品によってBrownもGrayも色合いが違い、それがまたこちらの想像力を掻き立てるので、絵の前にいる時間が長くなってしまいます。例えば次の絵。
Untitled (Brown and Gray) 1969, National Gallery of Art, Washington
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Black on Grayシリーズも然りで、各作品でGrayの色合いがかなり異なっているし、Grayの塗り方にも変化があって面白いです。例えば次の絵など。
Untitled 1969, Collection of Christopher Rothko
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色に関する発見もあったし充実した時間でした。暇があればもう一度見に行こうかという気になっています。ロスコもあまり人気がないのか、昨年秋の開幕時のことは知りませんが、今回の会場はガラガラで、じっくりと見て回れました。観客数は先日のベーコン展の方が多かったと思います。

Mark Rothko
Tate Modern
26.09.2008 – 1.02.2009

なお、終了後はテートの所有分はお返しに川村美術館に貸し出され、2月21日から6月7日まで「マーク・ロスコ 瞑想する絵画」という題で公開されるそうです。アメリカなどから出品された分もそこに展示されるのかどうかは分かりませんが。
ということで、テートでロスコが再び見られるのは早くとも7月以降ということになります。
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by dognorah | 2009-01-17 02:49 | 美術
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