2008年12月29日、ROHにて。
Turandot Lyric drama in three acts and five scenes Composer: Giacomo Puccini 体調不良で大分更新が途絶えていましたが、何とか復活して今年最後のオペラ鑑賞に行きました。9月に見た同じプッチーニの「西部の娘」でホセ・クーラがあまりにも絶好調だったのでこれも見てみようと思って行ったのでした。期待通り彼の歌唱はすばらしかったのですが100%とは行きませんでした。なぜなら風邪を引いていたからです。第1幕から時々観客に背を向けてコンコンと咳をしている状態で、それでも発声の時には何もないかのように美声を披露してくれていました。しかし第3幕の超有名アリア「ネッスンドルマ」ではあろう事かアリアの最中にコンコンを2-3度やったのです。それでもアリア後半の輝かしい絶唱部分は彼ならではの張りのある陶酔的歌唱が聴けましたが。なので、この後の公演はちゃんと出演できるのかちょっと心配ですが、ヨハン・ボータが暫く出演するので次の彼の出演は1月12日になり多分大丈夫でしょう。オペラハウス内は観客は言うに及ばず、オケピットからもしきりに咳の音が聞こえるすさまじさで風邪が大流行のロンドンを象徴していました。かく言う私もやや低めの温度設定のホールのせいもあってずっと咳を連発していました。今月中旬にかかったインフルエンザの後遺症が未だ尾を引いているのです。 José Curaと左はPaata Burchuladze、更に左はAlasdair Elliott 今夜の出演者は全てすばらしい出来で、タイトルロールを歌ったイレーヌ・テオリン(今年のバイロイトでイゾルデを歌った人)は初日を風邪で休んだのですが、fluが未だ直っていなくて調子が万全ではないという事前のアナウンスにも拘わらず聴かせどころの第2幕では、こんなのありかと思わせるようなすばらしい声で圧倒してくれました。そういう逆境でこれだけの歌唱を聴かせてくれたというだけで感涙。この人は風邪を克服している最中なのでこれ以降の公演は大丈夫でしょう。クーラはこの人から風邪を移されたに違いないです。第3幕ではキスシーンも含めてかなり接近して歌いますからね。 Iréne Theorin リューを歌ったスヴェトラ・ヴァッシレーヴァという人は初めて聞く名前ですが、清純な役にふさわしい清々しい声で、歌ったアリアは全てすばらしい出来でした。写真で見る通りなかなかの美人でもあります。なぜかこの人だけが顔のメークなしです。他の人はカラフの白面やトゥーランドットのアイマスク+白面など素の顔が分からないようなメークが施されているのですが。 Svetla Vassileva ティムール役も声量豊かなバスで立派な歌唱でした。皇帝も今までこのプロダクションで見た中では最高の出来。ピン、パン、ポンもしっかりした歌唱で上出来。特にピンを歌ったジョルジオ・カオデュロはとても印象的なバリトンです。白面メークなのではっきりとは分かりませんが体型的にも結構ハンサムな人です。 指揮のニコラ・ルイゾッティは多分初めて聴く人ですが、ダニエル・オーレンみたいに派手な指揮をする人で、音楽はものすごくダイナミック、それでいて叙情的な部分もすばらしく、間の取り方が並じゃない魅力的な音楽作りでした。また、合唱は特に弱音部の美しさが際立っていて舞台をしっかり支えていました。 Nicola Luisotti、José Cura、Svetla Vassileva こういう出来のいい音楽的環境ではストレスなしに舞台に集中でき、初めてこのオペラの面白さを認識すると共に、演出もなかなかのものだと思い直しました。ただ、モクモクモクモクと煙を多用するのはやめて欲しい。吸っても直接刺激的ではないもののあまり気持ちのいいものではないし、手法が安易すぎます。同じ演出でも以前はこんなにも多用していなかったはず。 でもとにかく質の高いオペラで今年の最後を飾れたので満足です。来年もいい公演に巡り会えますように。 皆様、よいお年をお迎え下さい。 Original Production: Andrei Serban Revival Director: Jeremy Sutcliffe Conductor: Nicola Luisotti The Orchestra of the Royal Opera House Princess Turandot: Iréne Theorin Calaf: José Cura Liù: Svetla Vassileva Timur: Paata Burchuladze Ping: Giorgio Caoduro Pang: Ji-Min Park§ Pong: Alasdair Elliott Emperor Altoum: Robert Tear Mandarin: Kostas Smoriginas
by dognorah
| 2008-12-31 08:51
| オペラ
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Comments(6)
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りょー
at 2008-12-31 14:27
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dognorahさんこんにちは。こちらにははじめてコメントさせていただきます。
ルイゾッティって、生で聴いたことはないので、指揮台でどれくらい烈しいのか(?)は知らないのですが、とにかく曲が見違えるような演奏を聞かせてくれる人だと思います。とくにプッチーニ。トゥーランドットはきっと素晴らしかっただろうなぁと想像しています。 ロンドンは風邪が大流行りなのですね。歌手同士で風邪のうつし合いとは大変(笑 クーラには冬休み中にすっきり全快してもらわないとですね。どうぞdognorahさんもお大事に…。 それにしてもdognorahさんの撮られる写真はいつも素敵ですね。ありがとうございます。
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Maintochter
at 2008-12-31 17:24
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しばらく更新がないので、ご多忙かと思っていたら、お風邪だったのですね。お見舞い申し上げます。かく言う私も年末になって風邪をひき、なかなか本調子になれないでいます(^^;
今年最後のオペラが、素晴らしい<トゥーランドット>で良かったですね!テオリンは秋の新国立劇場でも同じ役を歌い、つい先日TV放送されました。演出もなかなか凝っていて興味深いものでした。 ホセ・クウラも風邪に負けず頑張りましたね!しかし体調不良でもしっかり舞台に立つ歌手の皆さんは、さすがプロ!!とひたすら尊敬してしまいます。 日本では新しい年へのカウントダウンが後6時間余り。今年はお知り合いになれて、本当に嬉しかったです。また近いうち、どこかの劇場でご一緒できることを願っております。 健康に気をつけて、素敵な2009年をお迎え下さい☆
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dognorah at 2009-01-01 01:59
リョーサン、こちらでは初めてでしたっけ。ご来場ありがとうございます。ルイゾッティはCDなどで聴かれたんですね。歌手への指示も実に丁寧でしたよ。
今回は強いメークのためクーラの美男子振りが直接見えないのが惜しいですね。 りょーさんも風邪などお引きにならないよう元気で新年をお迎え下さい。
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dognorah at 2009-01-01 02:03
Maintochterさんも風邪を召されましたか。お大事に。
テオリンは先に日本でトゥーランドットを歌っていたのですか。今回は風邪にも拘わらず高音が何の翳りもなく発声されていました。 そうですね、またどこかでお目にかかりたいものです。お互い健康な2009年でありたいですね。
りょーさんとdognorahさんは、西部の娘の時にROHでお会いになったような気がするのですが・・・
初日と二日目は風邪でダウンしてたテオリンは回復したのですね。よかった。私は初日に観たのですが、代役もなかなか上手だったので文句はありませんが、来月もう一度行くときはテオリンで聴きたいです。ROHのブリュンヒルデ代役以来です。それにしても美しいトゥーランドット姫ですね。珍しいことです。 しかし、なんとクーラが風邪をひいてしまったのですね。来月また出るときまでに治ってくれるといいのですが。 dognorahさん、今年も楽しませて頂き、ありがとうございました。来年もあれやこれやでお世話になると思いますが、よろしくお願いします。 良いお年をお迎え下さい。
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dognorah at 2009-01-01 23:21
ロンドンの椿姫さん、私のブログ上では初めてということです。
やっぱりテオリンで聞くべきでしょう。代役は往年のヴァーグナー歌手だから上手だったとは思いますがお年だから最高音は出なかったでしょう。 クーラは次回まで充分日数が空いているので直ると思いますよー。 こちらこそ今年もよろしくお願いします。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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