ヴォーン・ウイリアムズのオペラ「Riders to the Sea」

2008年11月28日、ENOにて。
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Riders to the Sea
Opera in one act.

Music: Ralph Vaughan Williams
Libretto: Ralph Vaughan Williams based on the Play by John Millington Synge

Conductor: Edward Gardner
Director: Fiona Shaw
Video: Dorothy Cross
Set design: Tom Pye
Orchestra of English National Opera

CAST
Susan Gritton: Sibelius's solo cantata Luonnotar
Patricia Bardon: Maurya
Kate Valentine: Cathleen
Claire Booth: Nora
Leigh Melrose: Bartley


ヴォーン・ウイリアムズの没後50年を記念して作られたニュープロダクションです。

あらすじ
ほぼ原作通りらしい。アイルランドの島に住む女モーリャはオペラの始まる前に既に夫と義父と4人の息子を海で失っている。そして残り二人の息子のうちマイケルの消息が気がかりなところへ遠くの島で溺死体が打ち上げられたというニュースがあり、後に届いた衣類からまさにマイケルだと分かる。最後の息子はフェアで馬を売りたいということで、母親の反対を押し切って馬に乗って子馬を連れて行くが途中で落馬して海に転落し溺れ死ぬ。村人が運んできた死体を前に娘達と嘆き悲しむ。

こういうストーリーを読んで、よくオペラを書く気になるなぁとヴォーン・ウイリアムズという人の性格に思いを馳せるばかりです。ちょっと凡人の及ばない深い思考があってのことなのでしょう。彼の数少ないオペラの中では一番よくできた作品と位置づけられているようです。イギリスでは人気の高い作曲家でもあり、録音はDVDも含めていくつかあります。この公演はEnglish Opera GroupとCulture Irelandという団体がスポンサーになっています。

もともと11月23日に亡くなったRichard Hickoxが指揮をすることになっていたオペラです。初日が27日という差し迫った時期にリハーサルを重ねてきた指揮者が亡くなるという危機に音楽監督のエドワード・ガードナーは敢然と立ち向かい、各紙の絶賛を博する結果を提示したのでした。1時間程度という短いオペラにしろ大したものです。
公演は全部で4回予定されていますが、27日の後は28日に2回、30日にマチネーとなっています。私は28日の9時半からのこの日2回目の公演に行ったのでした。私の座ったのはUpper Circleという3階席ですがガラガラでした。でも、下の方の高い席を見ると意外に沢山入っていました。

このプロダクションで一番評判を取ったのは演出だと思います。演出したフィオナ・ショーはアイルランドの女優(ハリー・ポッターでも出演していたそう)ですが、演出家としてもとても才能ある人だという印象を受けました。まず、ヴォーン・ウイリアムズが指定もしていないプロローグを置き、シベリウスのカンタータをスーザン・グリットンに歌わせたこと。歌の内容は生命が海によって生じ、育まれ、また海に戻るというような意味で、10分以上続いたでしょうか。確かにオペラのストーリーとよくマッチしたものです。その舞台がまた凝っていてバックにヴィデオで女性や馬と思しき動物が水中を漂う海が映され、舞台には5mぐらいの長さのボートが立てられて、彼女は妊婦の姿をして上半分の仕切りに立って歌います。ボートと海は漁師一家の男達が次々と海で命を落としていくオペラの内容をそのまま反映しているのです。

オペラでも小1時間の舞台で4回しか公演しないにしては随分お金をかけたなぁと感心するくらいよくできた舞台です。島の岩棚のようなところをしつらえ、バックはヴィデオで海になったり空になったり。最初の部分で上から渚のような水の動きのヴィデオが床を長方形に投射するのですが、その真ん中でMauryaが寝ています。夢の中で海に思いを馳せている感じです。Bartleyの水死体が村の男達によって運び込まれて彼女は嘆きの歌を歌うのですが、そのときに上から静かにひっくり返したボートが5つ降りてきます。既に亡くなった5人の息子達を表しているのでしょう。最後に再びスーザン・グリットンが出てきてカンタータの一部を歌います。

オペラとしては何もいいことが起こらないストーリーで見る方もちっとも楽しくないのですが、アイルランドの貧しい漁村ではこれが人生なんだということでしょうか。音楽も特に魅力的ということはないにしても女性達のアリアは美しい。ただ、舞台はなかなか魅力的です。

歌手は全て特に文句を付ける必要のない出来で、パトリシア・バードンの好演を始め特に女性歌手は頑張っているという印象でした。

トップの写真は終演後の舞台です。
次の写真は母娘3人で、左からKate Valentine、Patricia Bardon、Claire Boothです。
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その次はEdward GardnerとSuzan Grittonです。
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by dognorah | 2008-11-30 07:43 | オペラ
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