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グルックのオペラ「Il trionfo di Clelia(クレリアの勝利)」

2012年6月24日、Linbury Studio Theatreにて。

Il trionfo di Clelia (UK prerniere): Opera Seria in three acts (1763)
Music: Christoph Willibald von Gluck (1714-1787)
Libretto: Pietro Metastasio

Clelia: Hélène Le Corre soprano
Orazio:Mary-Ellen Nesi mezzo-soprano
Taquinio: Irini Karaiannì mezzo-soprano
Larissa: Lito Messini soprano (Burçu Uyarの代役)
Porsenna: Vassilis Kavayas tenor
Mannio: Artemis Bogri mezzo-soprano
City of London Sinfonia
conductor : Giuseppe Sigismondi de Risio
director/set design: Nigel Lowery
costume: Paris Mexis
lighting: George Tellos

このオペラは初演は大成功だったそうですが、まともに作ると舞台装置が大変だという理由で長く上演機会に恵まれず埋もれてしまったという作品です。今回は多分City of London Sinfonia主導でEUやROHなどスポンサーがお金を出して上演にこぎ着けたようです。
ストーリーはローマとEtruscansという王国の戦いをベースにいくつかの恋愛を絡ませたもので、ややこしいながらも面白く展開していきます。Cleliaはローマの高貴な生まれで若い女性、それがローマとの和平のためにPorsennaが治める王国Estrucansの人質となっていてしかもローマ大使であるOrazioとは婚約している身。その彼女を見初めて横恋慕しているのがEstrucansの貴族Tarquinio、しかし彼はPorsennaの娘Larissaと婚約しており、将来は王国を継ぐことになっている。ところがLarissaはEstrucansと同盟関係にあるVejenti国の王子Mannnioを愛している。こういう状況の下、ローマとEstrucansの間の戦闘も交えてCleliaの運命が翻弄されていくのですが、最後はTaquinoの悪行がばれて処刑されると好きなもの同士が結ばれてめでたしめでたしとなります。
演出は段ボールの箱とヴィデオを多用したチープな舞台装置ながらなかなかよくできていて感心しました。かなり才能のある人ですね。
歌手は男声が一人だけで、メゾソプラノはすべてズボン役です。各歌手とも立派な歌唱でした。特に題名役のフランス人ソプラノ、エレーヌ・ル・コルは大変すばらしい声が高音から低音まで淀みなく出て印象的でした。もう一人のソプラノ、リト・メッシーニは第1幕がやや乾き気味の声でぱっとしませんが第2幕以降は調子が上がり楽しませてくれました。3人のメゾの中ではマリー=エレン・ネシが最も好みの声でしたが、他の二人も悪くないです。テノールも艶のある声がよく出て水準の高い歌唱です。
これとほぼ同じ出演者でCDが出ていますが、あるいはどこかですでに公演があったのかも知れません。

出演者達
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Hélène Le Corre
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Mary-Ellen Nesi
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Vassilis Kavayas
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Giuseppe Sigismondi de Risio
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# by dognorah | 2012-06-27 01:51 | オペラ | Comments(2)

ラトル指揮ヴィーンフィル演奏会

2012年6月17日、バービカンホールにて。

Brahms Symphony No 3
Webern Six Pieces for Orchestra
Schumann Symphony No 3, 'Rhenish'

Vienna Philharmonic Orchestra
Sir Simon Rattle conductor

大好きなブラームスの第3番、始まってすぐに久しぶりに聴くヴィーンフィルの柔らかく厚みのある弦にヒーヒー言ってしまいました。冒頭部だけで幸せになります。
ラトルの指揮はいつものように確信に満ちた憑かれたような棒捌きで、豊麗な音と饒舌さに圧倒されました。熱演過ぎてちょっとオケのアンサンブルが乱れる部分もありましたが美しく迫力がありスケールも大きい演奏は過去に聴いたどんな演奏よりも心を打つものでした。この曲の中でも特に気に入っている第3楽章は退廃的な気だるさに惹かれるのですが、今日の演奏ではもう少し健康的なニュアンスで肩すかしではありました。でもそれにも勝る緻密な美しさのためにあまり不満は感じられませんでした。第4楽章の凄まじい盛り上がりの後の静かさがまた納得のいく対比で印象深い終わり方です。この曲だけでおなかが一杯、もう帰ってもいいと思ったぐらいです。予定を変更してこの後すぐにインターヴァルになったのはよい計らいでした。

ヴェーベルンの曲は初めて聴く音楽ですが気品の高いアンサンブルで提示される各テーマはなかなか面白く、結構楽しめました。短い曲ながら大編成の管弦楽です。この曲だけはラトルも譜面を見ながら指揮です。

ラトルの指揮するシューマンは3-4年前に聴いた古楽管弦楽団OAEのもの以来ですが、今回は通常のオーケストラなのでどうなるか楽しみでした。あれっと思ったのはヴェーベルンが終了するとすぐにかなりの弦楽器奏者が退場したことで、音の透明性を高めるためでしょうか。しかし第1楽章の始まりではそれまでと違って弦楽器のギスギス感が少し出てきて、やはり急な人数変更でアンサンブルに支障を来したかという感じでした。第1楽章の後半ではそれはなくなりましたが。
演奏はここでもスケールの大きい堂々たるものでラトルのエネルギーをまともに浴びる感じです。ブラームスと同様やはり饒舌でシューマン節というかラトル節を大いに楽しみました。OAEとの演奏とはそれほどかけ離れていない印象でしたが奏者を間引いて透明性を保った効果かも知れません。

全体としてはそれほど演奏時間の長いコンサートではなかったし、聴衆も大いに沸いたのですがアンコールは無し。


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# by dognorah | 2012-06-23 01:00 | コンサート | Comments(0)

ロイヤルバレーのダブルビル

2012年6月12日、ROHにて。

(1)「Ballo della regina」
CHOREOGRAPHY: GEORGE BALANCHINE
MUSIC: GIUSEPPE VERDI FROM DON CARLO (CRITICAL EDITION BY GUNTHER/PETAZZONI)
MARIANELA NUÑEZ, NEHEMIAH KISH
SAMANTHA RAINE, YUHUI CHOE, BEATRIZ STIX-BRUNELL, EMMA MAGUIRE

20分足らずの短いバレー。主役二人は白い衣装で他の人たちはカラーの衣装。ダンスは優美なクラシックで楽しめる。ニュネスの元気いっぱいな踊りがすばらしい。

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カメラに微笑むニュネス
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(2)「La Syilphide」
CHOREOGRAPHY: AUGUST BOURNONVILLE
MUSIC: HERMAN LØVENSKIOLD
ADDITIONAL CHOREOGRAPHY, PRODUCTION, STAGING: JOHAN KOBBORG
THE SYLPH: ALINA COJOCARU
JAMES:JOHAN KOBBORG
MADGE: KRISTEN MCNALLY
EFFIE: EMMA MAGUIRE
GURN: JOSÉ MARTÍN
ANNA:URSULA HAGELI
TWO MEN: PHILIP MOSLEY, THOMAS WHITEHEAD
LITTLE GIRL: ANNABEL PICKERING
EFFIE'S FRIENDS: BEATRIZ STIX-BRUNELL, IOHNA LOOTS, LETICIA STOCK, ALEXANDER CAMPBELL, JAMES WILKIE, JAMES HAY
FIRST SYLPH: YASMINE NAGHDI
TWO SYLPHS: MEAGHAN GRACE HINKIS, LETICIA STOCK

ヨハン・コボーグが味付けをした振り付けのせいで彼の踊りがすばらしく、全技量を出し切ったのではと思わせるような凄さを感じました。ストーリーもしっかりした2幕物なのでバレーとしては堪能した作品です。

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# by dognorah | 2012-06-20 02:08 | バレー | Comments(0)

ロイヤルバレー「The Prince of the Pagodas」

2012年6月2日、ROHにて(ドレスリハーサル)

Choreography: Kenneth MacMillan
Music: Benjamin Britten

Conductor: Barry Wordsworth
Orchestra of the Royal Opera House
Belle RoseSarah Lamb
Belle EpineLaura Morera
PrinceFederico Bonelli

初めて見るバレーです。パゴダというからには東洋の場面が思い浮かびますが、舞台装置も衣装もあまりそういう印象は受けません。

舞台を見て理解したあらすじ
ある国の皇帝は年老いてきたので二人の娘に国を分け与えるがかわいい妹Roseの方により多くの国土が行くようにしてしまう。怒った姉Epineは言い寄る王子達と組んで妹と皇帝にいろいろ悪さを仕掛ける。それを逃れるために妹は蛙の導きでパゴダのある国へ行き、そこで知り合ったPrince of the Pagodasと仲良くなって二人で国に戻り、姉たちを追い出す。

ということで長編の割にはしょうもないストーリーで、それが災いしてか滅多に上演されないバレーです。なお、音楽はわざわざブリテンに委嘱して作られたもので、いかにもブリテンらしい響き。音楽は楽しめます。ブリテンが作曲したときの振り付けはJohn Cranko(1957年振り付け)のもので、1989年にKenneth MacMillanが改訂振り付けを行ったものです。この振り付けもそれほど凝ったものとも言えず、まあ普通のバレーで特に見所というのもないような感じです。

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# by dognorah | 2012-06-19 01:11 | バレー | Comments(0)

再びMTT指揮LSO演奏会

2012年5月31日、バービカンホールにて。

Berg Chamber Concerto
Mahler Symphony No 1 (‘Titan’)

Michael Tilson Thomas conductor
Yefim Bronfman piano
Gil Shaham violin
London Symphony Orchestra

ベルクの室内楽協奏曲は全く初めて接する曲です。独奏がピアノとヴァイオリン、オケが管楽器のみで大変ユニークな三楽章構成です。演奏開始前に指揮者MTTによる解説があり、この曲はシェーンベルクの50歳の誕生日を祝うために作曲されたとのこと。シェーンベルクはベルクより11歳年上で77歳まで生きましたがベルク本人は50歳で若死にしています。
曲は当然のことながら現代音楽で管楽器からは不協和音が頻繁に出てきますが独奏のヴァイオリンとピアノは総じて耳に心地よい音楽で、この二つが合奏するときの音楽はなかなか楽しめました。管楽器にしても独奏部分が多いのですがノーブルな音という印象です。演奏時間は30分ぐらいあるでしょうか、ちょっと長さを感じさせるもので、正直言って退屈さを感じた点もあります。

Gil Shaham, Yefim Bronfman and Michael Tilson Thomas
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マーラーの第1番は昨年ブダペストで聴いて以来です。各楽章とも大変立派な演奏で特に第3楽章の美しさは特筆ものでした。MTTはそういった面では非常に優れた指揮者ですが、オケを大音量で操るのはあまり得意ではないように見受けました。第4楽章の迫力など昨年聴いたフィッシャーや随分前に聴いたハイティンク指揮LSOの方が上です。ということで音楽的には十分楽しめましたが細かいところで不満が残る演奏でした。
# by dognorah | 2012-06-18 23:00 | コンサート | Comments(0)